まずはとにかく言っておきたい!
塩について「ミネラルが豊富」という表現は禁止されています。
「自然塩」「天然塩」という表現も禁止になっています。
それはなぜなのか?
について書いていきたいと思います。
目次
塩の規格
塩はほぼ塩化ナトリウム(NaCl)なので、そりゃ「ミネラルが豊富」です。
食品表示基準では、「ミネラル」として13元素が規定されています。
その13元素すべてを検出し、一部の元素については規定量以上ないと、「含む」も「豊富」の表示もできません。
成分の含有表示として、「カルシウムを多く含む」のように具体的な成分の含有を示す表示はできますが規定量以上の含有について、栄養成分表示にカルシウムの表示が必要になります。
マグネシウムや鉄なども含有量規定があります。
日本の規格(塩事業センター、日本塩工業会)
「食塩」:塩化ナトリウム含有量が99%以上のもの
「並塩」:塩化ナトリウム含有量が95%以上のもの
「精製塩」:塩事業センターの品質規格で塩化ナトリウム含有量99.5%以上のものをいう
コーデックス規格(国際食品規格)
塩化ナトリウム含有量が97%以上のもの
カルシウム・カリウム・マグネシウム等の副成分が3%未満のもの
有害元素が規定量以下のもの
ヒ素:0.5mg/kg以下
銅:2mg
鉛:2mg/kg以下
カドミウム:0.5mg/kg以下
水銀:0.1mg/kg以下
塩は何から作られる?
岩塩、湖塩は元を辿れば「海水」
天日塩も精製塩ももちろん「海水」から作られています。
なので、塩は「自然塩」だし「天然塩」です。
自然の塩で味がよい、健康に良いなどの良いイメージが消費者の頭の中で作られ、結果的にイメージと異なるという苦情も発生しこれら「自然塩」「天然塩」などのの表示は不可となりました。
にがりって何?
海水から塩を作った後に残る液体を「にがり」といい、主に塩化マグネシウムが主成分となっています。
この塩化マグネシウム自体は苦みがありますが、にがりを含む塩は味がまろやかに感じるそうです。
また、にがりを含んだ塩の方がアサリが砂をよく吐いてくれるという比較実験もあるのでこういった使い方も便利ですね。
赤穂の天塩参照
マグネシウムには骨の形成をサポートする働きがありますが、過剰摂取をすると下痢をすることも。
特に腎機能の機能が落ちている場合は高マグネシウム血症になりやすく、頭痛、悪心・嘔吐などからはじまり、重症化すると呼吸筋麻痺、四肢麻痺、昏睡、心停止などが起こるので注意しましょう。
ちなみに、豆乳ににがりを加えて加熱すると「豆腐」ができます。
塩の特性
- 食材のうま味を引き出す
例えば、かつお節と昆布で煮出した合わせ出汁に塩を少し加えることで風味が強まります。 - 脱水・防腐作用
食材に塩をまぶすことで水分が抜け、食材の野菜の水っぽさや魚の生臭さが軽減されたり肉や魚の身を締めるのに役立ちます。 - タンパク質の熱凝固作用の促進
タンパク質は加熱で固まりますが、塩分を含むと固まる温度が低くなり凝固を促進します。 - 肉・魚の保水性の向上
肉や魚に塩を加えることで水を多く保持することができ、弾力性が増したり柔らかくなります。 - 保存・防腐作用
脱水作用によって有害な微生物の繁殖を抑制します。 - グルテンの形成促進
小麦粉タンパク質の主成分であるグルテンに作用し、粘りを強めます。 - 果物の変色防止
果物に含まれるポリフェノールの酸化を抑えて変色を防止します。 - 青菜を色鮮やかに茹で上げる
- 青菜に含まれるクロロフィルが安定化し、発色が保持されます。
- 味の対比効果
例えばスイカやお汁粉に塩を少量使用することで甘味が強まったように感じることができます。
塩を販売する時のルール
塩を販売する際に「製法方法」を記載することが義務化されています。
内容としては、
・原材料の説明
・工程の概要を工程順に記載する
・原材料名と原産地、添加物を記載する
となっています。
その他にも
・栄養成分表示が義務化されている
・塩化ナトリウム以外の成分が25%以上含まれる商品には、「低ナトリウム塩」と記載できる
・にがりを含む場合はマグネシウムが0.1%以上含んでいれば、枠外に記載することができる
ルール違反の表示の商品があったら、最寄りの行政機関(消費生活センター、消費者庁など)または協議会にご連絡ください。協議会は、消費者、事業者、行政(消費者庁、都道府県等)から違反の情報提供があった場合、規約に基づいた調査を行います。また、協議会は事業活動として市場調査や試買検査を定期的に行うなど、調査活動を行います。
調査の結果、会員に表示ルール違反が認められた場合には、規約に基づき、当該事業者に必要な措置をとり、適正な表示となるように指導します。非会員の場合は消費者庁に情報提供を行います。
食用塩公正取引協議会より抜粋
塩の選び方
- サラサラした塩
食材へ均等に振りかけやすく、溶けやすい
溶けやすいので料理へ振りかけるとダイレクトな塩味を感じる - 結晶の大きな塩
カリカリとした食感があるので料理にかけるとアクセントになる
溶かす使い方は結晶の形を生かせないのでもったいない
口の中でゆっくり溶けるので甘味を感じやすい - にがりを含む塩(あら塩など)
アサリの砂抜きがしやすい。
焼き魚の皮がきれいに焼ける
塩味がまろやかに感じる。
塩の味
塩の味については、製法や原料はあまり関係がありません。
塩の規格にもあるように、塩の成分のほとんどがNaClで占めているので、塩自体の味よりもどんな使い方でどれくらいの量を使うかが一番重要なことです。
塩の使い方や美味しく感じる塩分濃度についてはまた次回書きたいと思います(^^)
最後に
塩の世界は本当に奥が深いですね。
調理の世界で30年近く生きていますが、塩分と火の扱い方、食材の切り方で料理の良しあしが決まるので、この単純で底なしの難しさが面白いところだなとつくづく感じます。
ではでは